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カウリスマキの行方

アキ・カウリスマキの新作=<ル・アーヴルの靴磨き>が公開されている。
だが、正直なところがっかりした印象である。元々、彼の作品はフィンランドの国民性の
反映なのか、登場人物の口はおもく、感情をおもてにだすことはない。つぎからつぎへと
見舞われる不幸のオンパレードも無表情に受け入れてゆく。受容的で耐性に長けた日本人
には、受け入れやすい作風だった。だが本作では、登場人物たちはすこし多弁になり、笑
顔までみせる始末である。架空の町のひとびとにも善意がみえはじめた。ストーリー性も
わかりやすくなった。だが、小津安二郎を師と仰ぐ、北欧の異端児の作品の味わいは薄れ
てしまった。ひょっとすると彼の作品は、日本ほど他国では受けていなのかもしれない。
配給会社などからの要請があっての変化なのかもしれない。だが、独特の映像言語をもつ
彼の作風の妙味がうしなわれたのは、淋しいことである。

20年前、三越の地下フロアーに<Afternoon Tea>があった。好立地のせいもあり、
仕事がえりの待ち合わせに重宝したものだ。雑貨スペースとカフェを併設しており、狭す
ぎず広すぎず案配のよい空間だった。オシャレな雑貨をあつかう店はそう多くない時代で、
洗練された商品群に好印象をもっていた。だが、評判になり上階に移転。あっと云う間に
商品テイストもかわり、ミーハーショップに転じてしまった。商品の佇まいに以前の面影
はなく、ほとんど店を覗くことはなくなってしまった。変化することで、多くのユーザー
に受け入れられてゆく。

映像作品も巷のショップも同様の課題と宿命を抱えている。以前のカウリスマキ作品のよ
うに、ほどよい支持者を得ながら独自の世界を提供してゆくことは、ほんとうに困難なこ
となのだろうか・・。



2012.05.19(Sat) - 映画


講義事始め

artcheck.jpg

学年はじめの恒例講義として、アートチェックテストを設けている。
いまの時代に必要なノンジャンルセレクト40項目。年度毎に更新しているが、あつかう
対象は、ギャルソンからダムタイプまでと幅広い。ファッション科には、必需のミナ・ペ
ルホネン、マルタン・マルジェラ・・。インテリアコースの場合は、空間・建築系項目を
ふやす。イームズ、柳宗理は、専攻を超えて常識として。トレンドとしてBACHの幅允
孝あたりもおさえておきたい。小津を知らぬは、日本人のメンタリティーに関わる。なく
なってピナ・バウシュの存在にもあらためて光があたっているだろうし、花森安治の先進
性も単なるマニアの領域としたくはない。ということで、今年はあらたに資料をつくり直
した。推定三千冊あるマイライブラリーから約50冊を選ぶ。選書作業に三時間半。撮影
に一時間半。ここですでに腰がいたい。その後の画像編集に三時間。一項目90分一コマ
は費やせるだろう内容を40項目90分で切りまくる。残念ながら学生の解答率は芳しく
ない。だが、いつか必要性を感じて折にふれておもいだしてもらえばそれで好い・・。




2012.05.15(Tue) - 教育


食う・寝る

ku:nel


季刊誌<ku:nel>は、独特のテイストを持っていた。
まず<食う・寝る>というネーミングが優れている。寝食をあつかうライフスタイル誌と
いうことが端的に示されて秀逸である。9年前の創刊号から数年前までの号まで取り揃え
ていたのだが、残念ながら最近は内容に失速感がある。<ku:nel>の魅力は、アート・デ
ィレクター=有山達也氏の力もあるが、やはり創刊時からの編集長=岡戸絹枝氏の存在が
おおきい。その岡戸氏は、昨年編集からはなれたようである。

毎号企画がよく、松浦弥太郎氏による花巻の高村光太郎山荘を訪ねてとか、南仏セザンヌ
のアトリエ探訪。ミナ・ペルホネンのチーフデザイナー=長江青さんの<走れ!乙女。>
なんてのもたのしかった。料理家=高山なおみさんとユニークな旦那スイセイさんとのし
ずかな暮らしぶり。イラストレーター=牧野伊佐夫氏による鎌倉ご隠居生活<木陰主義>
という風流な号もあった。ファッションや雑貨まわりの内容も多いので、参考資料として
モード系の専門学校での教材としても重宝している。写真もクウネル・カラーというか特
有の郷愁感ただよう魅力がある。なくなってしまうには惜しい雑誌なので、諦めずにいま
ひとつ奮起してもらいたいものである。



2012.04.17(Tue) - 図書


ちくまの友

ちくま


気がつくと書棚にちくま文庫が勢揃いしている。
文庫は、他社では通常400~600円台なのに、ちくまは800円台がざらにあり、し
かも学術文庫になると1200円の値段がついているものもある。金額は、どうも厚さ設
定の様でもなく200頁ほどのうすいものでも1100円となっている。べつに値段のこ
とを書きたかった訳ではなく、気になる作家の著書が多く重宝している。好きな川本三郎
の都市論や整体、身体論などの関連図書も多い。まず本の佇まいもちがう気がする。第一
手にしたときの触感がちがう。食感は大事だ。図書館の本が苦手なのは、ビニール保護さ
れていて、どの本もおなじ触感だからだろう。紙質をじかに感じ取れないのはさみしい想
いがする。埃や手垢がなじまないビニール素材には愛情をもちがたいということだろう。



2012.04.10(Tue) - 図書


トランプをする男

セザンヌ_1
            セザンヌ_2


折しも国立新美術館にて、セザンヌ展開催中。
これまで、セザンヌと云う画家に特別な関心を寄せたことはなかった。だが数年前、<座
る男>
という作品を上演するにあたって、セザンヌの<トランプをする男>が頭をよぎっ
た。それと糸井重里氏が、平日の昼間に喫茶店で憩う男性に着目していると語っていた記
事が記憶に残っていた。男性が生きずらい現代にあって、オトコたちをそっと見守るよう
な男性讃歌の作品を志向した。<座る男>は、2009年、名古屋市内=peacenikにて、開
場から終演まで立ち上がることのないダンス作品である。

仕事帰りの農夫たちが、トランプに興じる姿をとらえた作品は、実は数点ある。セザンヌ
が、どんな想いでこの作品を残したかはわからない。社交嫌いの偏屈な人物と伝えられて
いるが、少年時代からの親友エミール・ゾラとの交友。先輩格のピサロとの散策。モネや
シャガールからの理解と交流。晩年近代絵画の父として評価後は、若き画家たちが頻繁に
セザンヌ詣でをしたという。充分、社交家ではないのかと首を捻るが、一日の労働から解
放されたひとときを憩う農夫たちのように自分の時間を愛おしんでいたことはたしかだろ
う。

http://cezanne.exhn.jp/index.html



2012.04.03(Tue) - 美術





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